くらはは村長の表情の中に安堵の色を見て取った。たまもの選択は正しかったのだ。そこまで読み切っていたのかもしれないと思う。くらははますます妖が分からなくなった。たまもの存在は、父のことを意識するのを頑なに拒み続けていたくらはが探してみようと思い直した一端でもあった。
「じゃ、行くか」
くらははあずみといずみを見た。二人は同時に頷いた。
三人は森まで来る。森の入り口にはえんが立っていた。
「まだいたのかい?」
「ああ。もう行くところだが」
「もしかして待ってたのかい?」
「ああ。……一言謝っておきたくてな。悪かった。その、なんというか全てにおいて、わしに非がある」
「律儀だねえ。さて、なんのこと言ってんのかアタシには分からないけど」
「では……」
「別に気にしちゃいないさ。アタシも似たようなもんだったしね。考え改めるんなら言うことはなんもないね」
えんは黙って頭を下げると走り出した。

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