「おぬしの中におるとき風の技を使(つこ)うたであろう。あれはわらわの力じゃないぞ。おぬしの中にあるもの。おぬしには分からぬかもしれぬが、あれは妖力じゃなく神通力じゃ。妖の中で神通力を使うものはそうはおらぬぞ」
「知っているのか?」
「知っていると言えば、知っておるのう。さて、どうする?」
くらはに選択権はないに等しかった。
「分かった」
「そうか。ならわらわは引っ込むとするか」
封じられることなくたまもは自ら進んでいずみと入れ替わった。
あずみといずみの二人を見てから、くらはは村長へと視線を移した。
「そういうわけみたいだからさ」
村長は眉を寄せつつも頷いた。
「分かりました。ならば仕方ありませんね」
罪滅ぼしをすることはできなくなったが、村長の心は暗くもなかった。息子を育てることに失敗し、どうしようもなかったとはいえ、息子を死に追いやった二人をちゃんと育てられるか不安だった。先への重責から解き放たれほっとしていた。

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テーマ : 日々のつれづれ
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