繋がった手から、自分ではない意識が流れ込んでくるのをくらはは感じた。痛みもなく、一瞬の出来事だった。意識を乗っ取られるものとばかりくらはは思っていたが、しっかりと残っていた。自分の体を操ることさえ、やろうと思えば造作なくできそうだった。くらはの体の内では二つの意識体が、同じ強さで存在していた。
「悪くない」
くらはの中のたまもは呟いた。
「何してるの? こないの?」
ころくが言った。たまもは刀を構えた。
「待たずにくればよかろうて」
「そっちなの?」
ころくは笑った。たまもはくらはの姿でゆったりと笑んで応えた。
「じゃあ、行くよ」
ころくは狐へと姿を変じ、たまもへと飛びかかった。
『実体化しないのか?』
くらはが自らの内で、たまもに問うた。
『無用。おぬしの秘めたる力を使えば、十分じゃ。それにわらわが狐の姿へと変じれば、おぬしが壊れる』
たまもは牙を刀で軽々と受け流した。どんな攻撃も、どんな速さにもたまもは対応した。くらはよりもしなやかに、素早く、そして力強かった。

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